意識低い系・理系大学院生のマインツ留学体験記

化学専攻の修士2年生です。10月から約2ヶ月半、ドイツのマインツ大に留学。意識が低くても留学生活を満喫できることをお伝えできれば幸いです。

ドイツで電子たばこが普及しない理由 - 社会が喫煙者に優しいから

最近、iQOSやVapeといった電子たばこが普及し始めてますよね。日本だと、コンビニにも専用のヒートスティックがズラリと並んでいます。喫煙所に行くと一人や二人は電子たばこを嗜んでいるもんです。

ところがドイツでは、わたしの体感ですが、電子たばこユーザーが全然いませんマインツ大学には信じられない数の灰皿が設置されていて、あちこちに歩きたばこマンがいるんですが、私の見る限りですと、彼らは全員紙巻たばこを嗜んでいます。

それにですね、たばこ屋さんには一応、iQOSのヒートスティックは置いてあるものの、品揃えは「あぁ、普及してないんだな」と思わされるラインナップです。2〜3種類しか取り扱っていません。マインツではわたしが好きなメンソールが売ってない😓

さて、前回iQOSをホメまくった記事を書いたんですよ。これはとてつもなくいいモノです。

mainz-studyabroad.hatenablog.com

この記事を書いてて「こんな便利なもの、合理的で頭いいドイツ人たちの間で普及しないのはなぜだろう」と思ったのです。部屋で吸えて服は臭くならない、吸ってる本人も周囲の非喫煙者も幸せになれるスーパーいいグッズなのですがね……。ですが、ドイツで電子たばこが普及しない理由って、意外と単純なんですよね。ということで、なぜドイツで電子たばこが普及しないのか、その理由を書いていきたいと思います。

日本で電子たばこが普及した理由 - 喫煙者に不寛容だから

まずは日本の事情から。

一喫煙者としての感想なんですが、日本における喫煙者って、もはやいじめられっ子みたいな扱いですよね。喫煙所をどんどん減らされて、値段もどんどん上げられて、それでも残った喫煙者たちはしょうがなく、満員の喫煙所で肩身の狭い思いをしているというわけです。 

なんでここまでイジメられるかというとですね、わたしの考えですと「喫煙者は臭くて汚いから」だと思います。紙巻たばこの臭いってキツいですよね。一緒にいるだけで服がやに臭くなっちゃいます。それに吸い殻をその辺に捨てる不届き者は後を絶たない。そりゃ「おいオメーらふざけんなよ、イジメるからな」ってなるわけです。これはしょうがない。

こういう背景を考えると、臭くならない電子たばこが普及するのも頷けます。

ドイツで電子たばこが普及しない理由 - 喫煙者に寛容だから

これに尽きます。屋外で吸えばオールオッケーなので、わざわざiQOSを買う必要が無いんです。

前回の記事で紹介したように、ドイツの灰皿事情は日本とは極めて異なっております。とにかく多すぎます。街中、駅ホーム、大学構内、屋外にはありとあらゆる場所に灰皿が設置されています。意識低いので放ったらかしになってるマインツ大学灰皿カウントチャレンジですが、いつも歩いている大学構内の通学路だけでも32個もの灰皿が確認できました。東京の灰皿事情とは真逆ですね。だもんで、街中喫煙者で溢れかえっています。嫌煙家の方はドイツに行かないほうがいいと思います。

がしかし、こと屋内に限っては、日本のほうが吸える場所が多いと思います。わたしの見てきた限りですと、バーでも飲食店でも、灰皿は必ず屋外に設置されています。というわけで、歩きたばこが厳しく罰せられる日本とは真逆でして「吸うやつは外で吸え!」という形で、分煙が成り立っているんですよね。

このように、屋外に関しては喫煙ユビキタス社会になってるドイツでも、やはりたばこって良くないものなので「煙がくっせえからやめろ」「吸い殻のゴミが汚いからやめろ」「健康に害があるからやめろ」と圧力がかかるわけです。値段という形で。こちらのたばこのお値段は、ひと箱6ユーロくらいが相場でしょうか。日本円だと800円!こりゃ高い。がしかし、わたしは「これ、全然効果ないんじゃないの?」って思っちゃいます。多少値段が上がったところで「しゃーなし、ちょっと高いぐらいなら我慢して買ったろ!」ってなるだけだと思うんです。外に出たらスパーっと一服できるわけですから。さらに、吸ってても白い目で見られることがない。社会全体が「屋外は喫煙者スペースだからしゃーない」という認識になっているわけです。

というわけで、ある意味、究極の分煙が成り立ってるんですよね。わたしのお世話になっているラボにも2人喫煙者がいるので「iQOSいいよ、部屋で吸えるよ」と話しかけてみたんですけれども「いやオレんちバルコニーあるからいらへんわ(超訳」みたいなこと言ってました。

……長々と書いてきましたが、つまるところですね、ドイツって「屋外ならしゃーねーなーニコチンモンキーどもがよー」と、社会全体が喫煙者に寛容なんですよね。確かに屋外なら煙の臭いがこもることもないし、灰皿をいっぱい設置すれば(その辺に投げ捨てられてるものもいっぱいありますが)ゴミの問題もさほど深刻にならないということで、まぁ優しいんです。とにかく優しい。だから、やめられないしとまらない。屋外で吸えば誰も文句を言わないので、わざわざiQOSなんて買う必要が無いんです

フィリップモリス社は、iQOSの開発に2500億円もの資金を投じたそうです。臭くならないようにしなきゃ……ゴミが出ないようにしなきゃ……という企業努力ですね。がしかし、ドイツという市場ではこの企業努力はほとんど効果がなかったんじゃないのかなあと思います。外出てその辺で吸ってりゃ誰も文句言わない。そりゃ、売れないのも頷けます。

日本のたばこ政策は正しい

おまけにちょろっと書いとこうと思うんですけれども、結局はこういうことなんですよ。いくら増税したって吸うやつは吸う。でも、社会全体が「クセー!ヤニカスしね!」みたいな流れになったら、肩身が狭いので吸わなくなる。というか吸えなくなる。そういう意味で、増税はもちろんのこと、喫煙所の数をとにかく減らして、歩きタバコは罰して……といった、日本のたばこ政策は非常に的確だなぁと思います。一喫煙者としてはなんとなくイヤだなぁと思うんですけれども、社会全体の流れ―すなわち、喫煙者を減らしたい―という観点からですと、これらの政策には心から賛同できます。かしこい。うん。

まとめ

  • 日本は喫煙者に不寛容だからiQOSが売れる
  • しかしドイツだと屋外ならば吸い放題
  • すなわち社会が喫煙者に寛容だからiQOSは売れない
  • 日本のたばこ政策は正しい

というわけでした。

 

ありがとうございました。