意識低い系・理系大学院生のマインツ留学体験記

化学専攻の修士2年生です。10月から約2ヶ月半、ドイツのマインツ大に留学。意識が低くても留学生活を満喫できることをお伝えできれば幸いです。

やっぱり日本式の研究生活も悪くないなと思った話

「昨日はNMRが混んでて23時まで帰れなかったわー」

「いや、昨日はカラム2本やった上に重合3つ仕込んだせいで25時までかかったわー」

「いやいや、俺なんか転化率の経時変化を測定してて29時までいたわー」

「いやいやいや、(以下略)」

みたいに、日本の有機化学者って体育会系なとこがあって、遅く残ることが許されるというか、遅く残ってる奴ほどエラいって感じなんですよね。

こういう風潮について、わたしはドイツに来て2週間目ぐらいまでは「いやお前らエラくねーから!ちゃんと寝ろ!休め!」みたいに、ちょっとカブれちゃってたんですけれども、1ヶ月あまりが経過したいま、これもこれで悪くないなぁと思ったので、感想を書きます。

遅くまで残る自由・休みの日に実験できる自由がある@日本

有機化学の実験って「長時間かかる反応をこまめに面倒見たい」「透析の水換えだけしたい」「蒸留」みたいな、長時間面倒見ないといけない作業が結構あるんですよ。そして、夜遅くまで残っててもいいよっていうルールは、こういう作業をやる上でとてもありがたいんです。日中は短時間で終わることをこなしつつ、長時間かかる作業は夜間にちょろっと面倒を見る。こういうスタイルで実験すると、時間がとても有効に使えるんですよね。また、休日にも実験できるということもとても素晴らしいです。金曜の夜に反応を始めて、土曜日の午前中だけ学校来て精製終わらせるとか、そういうふうなフレキシブルな時間の使い方ができるんです。

ただ、これは諸刃の剣なんですよね。やりたい人はやりたいだけ実験できていいことなんですけども「先輩が帰らないからなんか帰りづらいなぁ」と、後輩くんは忖度しちゃうんですよね。わたしは意識低いので忖度されたことは多分ないと思います。思いたい。そしてこの忖度できる後輩くんは、帰りたいのに帰れないという精神状態ではまともな実験はできません。生産性が下がります。無論、翌日のコンディションも最悪になっちゃう。ラボ全体がそういう空気になると、わたしみたいなスーパー空気読めない君でも忖度しちゃうんですよ。また、先生が「お前ら今日からコアタイム9-23時な、ちなみに土曜も平日扱いだから」と宣言した瞬間に、わたしみたいな意識低いのはメンタルやられて中退するか行方不明になるかのどっちかです。多分。

というわけで、夜間や休日の実験ってどうなん?ってことを考えてみますと、悪い面もあるんですけども、いっぱい実験できるっていう点ではありがたいことなんですよね

とっとと帰れ!寝ろ!休日は来んな!休め!@ドイツ

夜の8時とかになると本当に誰もいなくなりますそうなると強制的に帰らざるを得なくなります。ひとりで実験してて事故が起こると即ち死に繋がるのでしょうがないんですけど、まだ夜の8時なのに……と、違和感を覚えます。1ヶ月過ごしたけれども、まだまだ慣れないですね。(こういう集団の中でわたしはよく一番遅くまで残ってるので、日本的な感覚からか、なんかエラいな自分って思うんですけど、17時とかになったらさっさと帰るドイツ人からしたら「残業しないと実験量稼げないんか君……効率悪いね」って思われてるのかもしれません😓)

とっとと帰って寝ろ!というシステムは、確かに健康にはとても良いです。

mainz-studyabroad.hatenablog.com

が、このルールの欠点として長時間かかる実験がとてもやりにくいということが挙げられます。上記の「長時間面倒を見る作業」で丸一日潰れちゃうので、きちんと計画を立てないと実験が進められません。もちろん、進めるスピードもゆっくりになります。

また、土日が使えないという点もつらいですね。このルールの存在から、必然的に金曜日は1日で完結できる作業か、もしくは土日(48時間)放ったらかしにしても大丈夫な作業しかできなくなります。まぁというわけですので、彼らが金曜日にビールブレイクするのも頷けます。やりたくてもできねーからしゃーねーし酒でも飲むかぁって感じなのかもしれないですね。

aufhebenしようぜジャパンundドイチュ

というわけで、なにもドイツのルールが全て日本より勝ってるってわけではないんです。お互い悩みごとは尽きないんですよね。。ってことで"aufheben"なんてカッコつけて言ってみたいですね。例えば「夜間の実験は禁止だけども土日の日中だけはオッケーだよ、でもなるべく早く帰って寝てね」とか「夜間は合成禁止だけど水換えぐらいならいいよ、でもなるべく早く帰って寝てね」とか。お互いにイイなぁと思うところがあるので、aufhebenできたら最強ですね範馬刃牙ぐらいには強くなれると思います。

まとめ

  • 日本式:時間の制約があまりない代わりに、その弊害もある
  • ドイツ式:時間の制約の恩恵もあるが、もちろんその弊害もある
  • 互いの良いところをaufhebenしたら強くなれるかもしれない

というわけでした。こっちに来て、時間無制限って強いなぁって思いました。自動化や使い捨て化は「お金持ち」だからできる。一方で、手洗いや使い回しができるのは「時間持ち」だからできる。というわけですね。いやー色々考えさせられます。意識低いんですけど留学すると楽しいですね。

 

ありがとうございました。