有機化学ミスあるある - 風袋は"きちん"と測定しよう
有機化学者にとって、収率を出すという行為は研究する上で非常に重要です。合成して精製して純粋なモノが取れたら「どれだけとれたのか?」を測定しないと、先生に叱られるだけならいいんですけど、これをキチンとしていないと、例のなんとか細胞の人みたいになります。怖いですね。
で、どうやって収率を出しているのかというと、
(イ) 空の容器の重さを量る(これを風袋重量という)
(ロ) (イ)の重さ+精製済みのモノの重さを量る
(ハ) (ロ)から(ハ)の重さを引くと、収量がわかる(容器の重さを引けば、モノだけの重さになりますよね)
(ニ) (ハ)の値から、がんばって四則演算したら収率になる
という、小学生でもできそうな工程です。わたしにもできます。
できるはずだったんです……。
何をやらかしたか
はい。この超便利チューブくんに、精製したポリマー溶液を入れて凍結乾燥しました。もちろん、風袋量りましたよ。量りました。
……さて、ここで二通りの選択肢が出現します。
1. キャップ込みの重さを量る
2. キャップ抜きでチューブだけの重さを量る
さあ皆さんならどうするでしょうか……と聞くまでもなく、どっちでもいいんですよね。賞味の重さだけ分かればいいので。
ちなみにわたしは1. を選択しました。すると……
キャップを無くした
はいやらかしました。これが常日頃から言っている意識低いということです。キャップの重さ抜きだと正確な収量を出せません。ということは収率も出せません。しかも中に入ってるのはおそらく数十ミリグラムだけ。これが数十グラムスケールとかだったら、まぁ代わりのキャップ乗っけりゃバレねえだろとか悪いこと考えられるんですけど、この場合はそうはいかないわけですよ。この手の容器の重さって個体差が結構あって、普通に数十ミリグラムぐらいずれるんですよね。
……「うわぁ意識低い」って心の底から思いました。
どこで無くしたのかも覚えていません。ということで、わたしは正確な収率を出すことができなくなってしまったのです。ドイツに来てからは色んなことについて真面目にやってきたつもりでして、これといったミスというミスはしていなかったのですが、慣れてきた安心感からかついにやらかしました。アホー
……まぁ、ちゃんと重さを量った別の容器に移せばいいだけなんですけど、残念ながらわたしの扱ってるポリマーはネバネバした水飴みたいなやつなので、容器内で再沈殿するとかなんだかんだ、とても面倒くさく非生産的な作業をしなければならないと思うととても気が重かったです。ただ移し替えるだけなんですけどね。
教訓
「もしかしたら無くすかも」というモノは「無くしても大丈夫なようにする」ってことですね。今回の例で言えば、キャップなんかその辺に放っておいたらどっかいきますよね(意識低いとか言わない)。だったら無くなっても大丈夫なように、風袋はチューブの重さだけ量るようにすればいいんですよね。とても勉強になりました。
この教訓って他のことにも応用できるんではと思います。日常生活だったらスペアカードを作るとか、合鍵を余分に作っておくとか、まぁ色々ですね。そもそも無くすなよって言われても、意識低いからそこはしょうがないですね。だったらはじめから「無くしても大丈夫なように」しておけば、意識低くても生きていけるというわけですね〜。
まとめ
- 収率は有機化学者にとって大事な数字である
- 風袋に関してかなりアホなミスをした
- 何事も「無くしても大丈夫なようにすべし」ということを学んだ
忘れっぽいのは生まれ持ったものなのでもうしょうがないんですよね。あれどこやったっけ?というイベントが目白押しなわたしみたいなのは、まぁこういう感じでひとつひとつ虱潰しに対策していくと、だいぶ生活のクオリティが高くなるんではないでしょうかということでした。
ありがとうございました。